空港ラウンジ・豪華客船で「ブランドの香り」を貫く難しさとは何か

空港ラウンジと豪華客船で香りブランディングを行うイメージ

空港ラウンジや豪華客船で、自社らしい香りを届けたい。航空会社や豪華客船のサービスに、香りによるブランディングを取り入れたい。そう考える企画担当者の方もいらっしゃるでしょう。

ただ、航空会社や豪華客船で香りを使うときは、高級ホテルのロビーとはかなり条件が変わります。利用者は不特定多数で、空間は場所ごとに広さも空調も違い、導入後は同じ香りを長く保つことが求められます。さらに、使用する香料の引火点など、導入先が求める安全上の条件を満たし、その根拠を資料で示すことも重要です。この記事では、ブランディングやサービスを担当する方に向けて、香り設計の難しさを4つの壁に整理し、JALの空港ラウンジと豪華客船「飛鳥Ⅲ」の事例に、プロモツールの開発・品質管理の実務を交えながら、その対応方法を紹介します。

航空会社・豪華客船の香り設計で立ちはだかる4つの壁

  • 壁1 利用者が様々。安全性を担保しながら、ブランドの印象を届ける必要があります。アレルギーへの配慮に加え、香料の引火点など、導入先が求める安全上の条件を確認します。
  • 壁2 空間が一つずつ違う。広さも空調の風向きも、場所ごとに異なります。それでもブランドとしての統一感を保つ必要があります。
  • 壁3 拠点が増えても同じ香りを保つ。どの空港でも同じ強さで届け、ブランドの印象を統一したい場面です。
  • 壁4 導入後も長く保つ。交換や保守の仕組みが要ります。
JALオリジナルアロマの商品イメージ

壁1 利用者が様々ななかで、安全性を担保しながらブランドの印象を届ける

JALのラウンジ担当者は、香りの導入でもっともこだわったのは素材だったと話しています(乗りものニュース、2020年11月)。航空会社として安心・安全を届ける責任があり、アレルギーのあるお客様もいるためです。

JALのラウンジでは、素材の品質を重視し、天然香料を採用しています。ただし、天然素材を使うだけでは安全性は確保できません。安全性を左右するのは、成分の性質、使用濃度、用途、そして管理の体制です。

プロモツールは、IFRA(国際香粧品香料協会)スタンダードを遵守し、用途に応じた香料の選定と配合設計を行っています。IFRAスタンダードは、RIFM(香粧品香料原料安全性研究所)による安全性評価などを基礎としています。

また、空間フレグランス業界唯一の日本香料工業会の正会員としてIFRAスタンダードを遵守する義務を持ち、香料の安全性や品質管理に関する情報を継続的に収集し、開発・管理に反映しています。さらに、プロモツール香り技術研究所では、フレグランスアナリスト・西野静恵がガスクロマトグラフィーを用いて成分を分析しています。その結果を、原料の安全性情報や用途に応じた使用条件と照らし合わせ、香料の選定と品質管理に活用しています。(※香料の安全性を調香師と分析体制で確かめる考え方については、コラム「「天然香料なら安全、合成香料なら危険」は本当か?」でも詳しく解説しています。)

もう一つ、香りの印象からは分からない確認項目が「引火点」です。天然香料であることだけでは、引火点に関する条件への適合は判断できません。

航空法や船舶の危険物規制では、引火点がおおむね60℃以下の液体を引火性液体(危険物)として扱うため、空港や船内で香料を使用する場合、導入先から引火点60℃を超えることが求められることがあります。プロモツールでは、クライアントから希望があれば、自社の引火点測定器で香料の引火点が60℃を超えることを毎月確認し、その証明書を顧客に提出しています。

香りを開発した時点で条件を満たしていることに加え、供給を続けるなかで測定と記録を継続することも、品質管理の重要な役割です。安全性を安定して担保できることが、ブランドの香りを長く使い続けるための前提になります。

空港ラウンジや豪華客船ですでに香りを使用している場合も、導入担当者は、現在使用している香料について、自社の導入基準に適合していることを示す測定結果や証明書の提出を供給会社に求め、確認することが重要です。確認項目は、対象製品名、対象ロット、測定日、測定方法、引火点の測定結果です。原料や配合が変更された際の再確認についても、あらかじめ取り決めておくとよいでしょう。

壁2 空港ラウンジごと、船内の場所ごとに、広さも空調も違う

JALの担当者によると、コンパクトなラウンジでは、ディフューザーで香りを霧状に噴射し、ファンで広げます。成田や羽田のような大きなラウンジでは、壁の中にディフューザーとファンを埋め込むところもあります。空調の風向きも空港ごとに違うため、置く場所が重要だといいます。

豪華客船「飛鳥Ⅲ」では、場所の性格に合わせて機器と香りを分けています。3層吹き抜けのアトリウム「アスカプラザ」、オリジナルグッズを扱う「アスカコレクション」、展望大浴場のグランドスパには、国産の高級業務用ディフューザー「セントFORESTⅡ」を設置しました。

スパトリートメント施設「アスカ サロン&スパ」には、緑の先に広がる海を表現した香りを開発し、レセプションなどにノンリキッド型フレグランススティックの「セントSTICK」を置いています。

航空会社や豪華客船では、広さも用途も異なる複数の空間を、一つのブランドとして設計・管理することが求められます。場所ごとに最適化しつつも、ブランドとしての統一感を保つことが重要です。

セントFORESTシリーズの業務用アロマディフューザーの製品イメージ

壁3 拠点が増えても、同じ香りと同じ強さを保つ

JALの担当者は、どの空港でも香りの強さをできる限り同じにしていると話しています。濃さを変えたアロマを空港ごとに使い分け、噴射のタイミングも、出し続ける空港、何分か吹いて何分か休ませる空港と分けています。香りを入れている空港では、調香師が実際に現地を訪れて確認してから提供しています。どの空港でも同じ印象で届けることが、ブランドの香りとしての一貫性を保つために重要です。

飛鳥Ⅲについてプロモツールは、大規模な空間でも均一に香りを行き渡らせる技術力と、香りで体験価値を的確に表現できる再現性の高さが評価されたと、2026年5月のプレスリリースで発表しています。大規模な空間でも均一に香りを行き渡らせることは、ブランドの香りを場所に左右されず届けるうえで重要です。

壁4 導入後も、同じ香りを長く保つ

JALの担当者によると、ラウンジの香りは導入以来ずっと変えていないそうです。香りの開発には1年近くかかり、朝用と夜用それぞれ3種類ほどに絞った候補を、会議室で実際に焚いて決めました。天然素材の香りは持続する時間に限りがあるため、交換の頻度も「新鮮なうちに」と気を配っているといいます。

機器の側では、「セントFORESTⅡ」が霧化の仕組みを取り換え可能なカートリッジ内に持ち、香りを切り替えるときに本体を交換しなくて済みます。万が一の不具合にも、国産の機器として迅速に保守できる体制を整えています。導入後も同じ香りを安定して届け続けることが、ブランド資産として香りを維持するうえで重要です。

4つの壁を越えるための進め方

ブランドの香りを空間に定着させるための一般的な進め方は、次の4ステップです。

1. 香りを届ける場所と、その役割を決める。入口で迎える、吹き抜けに広げる、スパで休ませる、などです。

2. 利用者への配慮と安全上の条件を確認する。アレルギーなどへの配慮、使用する香料の基準、引火点の条件、提出が必要な資料を、調香の前に導入先と確認します。

3. 現地で確かめる。設置場所、風向き、強さ、噴射の時間を、実際の空間で調整します。

4. 運用のルールを決める。交換頻度、保守窓口、定期的な品質確認、測定記録や証明書の提出方法、原料・配合変更時の対応を決めます。

空間で出会った香りを、持ち帰れる形にする

空間の香りは、商品や備品に広げることもできます。飛鳥Ⅲでは、船内で使う「ASUKA Cruise Original Aroma」と同じ香りを使った「ASUKAⅢ オリジナルアロマ&ストーンセット」を制作しました。旅の余韻を自宅でも楽しめる限定品で、オンラインでも購入できます。(※空間の香りを商品や備品に展開する方法については、コラム「空間の香りをルームスプレーや客室アメニティとして商品化する方法」でも詳しく解説しています。)

空間で設計した香りを、体験の延長線上にある「持ち帰り」にまでつなげることで、ブランドの印象をより長く残すことができます。

航空会社・豪華客船の香りを支える、プロモツール香り技術研究所

4つの壁を越えるうえで大切なのは、導入の前に、安全性の基準、空間ごとの届け方、導入後の運用までを決めておくことです。これらの条件を整えることで、ブランドの香りを空間に定着させ、長く維持しやすくなります。

プロモツールは、JALの空港ラウンジ、豪華客船「飛鳥Ⅲ」、グランドニッコー東京 台場、JRタワーホテル日航札幌などの空間で、香りブランディングとアロマ空間デザインを手がけてきました。資生堂やコーセーといった化粧品メーカーでの採用実績もあります。

プロモツール香り技術研究所には、研究所長・マスター調香師の渡辺武志、エグゼクティブフェローの横山弘、フレグランスアナリストの西野静恵、若手調香師の鈴木はるのなど、専門性や経験の異なるメンバーがそろっています。

香りの設計に、成分分析、安全性情報の確認、品質管理、空間拡散設計を組み合わせ、異なる専門性を持つメンバーがチームで開発と運用を支えています。感性による香りの表現と、測定・分析による品質の確認を両立させる体制です。

感性を生かした香りづくりと、測定・分析に基づく品質管理。その両方を研究所の体制で支えていることが、プロモツールの強みです。

豪華客船、ホテル等ラグジュアリーな施設で香りブランディングを検討している方は、香りを届けたい場所と想定する利用者を添えて、香りブランディング(プロモツール)へご相談ください。

この記事の監修

緒方 健介代表取締役社長CEO

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