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同じ香料を使ったはずなのに、製品になると印象が違ってくる。高級化粧品の香りづくりでは、香料を受け止める「基材」との関係が大きな課題になります。その違いを調べる比較実験は、まず何をそろえ、何を観察するのかを決めることから始まります。
ここでは、香水・クリーム・シャンプーを例に、プロモツール香り技術研究所が製品ごとの香りの違いをどう捉え、開発に生かすのかをご紹介します。同じブランドの香りを複数の製品で表現するために、調香師は何を確かめるのでしょうか。
基材が変わると、鼻に届く香りも変わる
香料を同じ量だけ加えても、鼻に届く成分の量やバランスまで同じになるとは限りません。クリームの油分やシャンプーの界面活性剤などは、香料成分がどこにとどまり、どのように空気中へと出ていくかに関わっています。
界面活性剤を含むモデル系の研究でも、組成や希釈によって香料の放出のされ方が変わることが報告されています。ただし、それだけで特定の製品が「甘くなる」「爽やかになる」とまでは言えません。香り全体の印象は、対象となる基材で実際に嗅いで確かめる必要があります。
比較したいのは、単なる香りの強弱だけではありません。つけ始めに目立つ香り、途中で感じる香り、そして最後に残る香り。プロモツール香り技術研究所では、こうした変化を分けて捉え、どの特徴を残し、どこを調整するかを考えます。

比較実験の第一歩は、香料を入れない基材を用意すること
実験の流れは、比較の目的を決め、条件をそろえ、違いを記録していくという順序で組み立てます。その中でまず用意したいのが、香料を加える前の基材です。「無香料」とされていても、原料そのもののにおいがまったくないとは限らないからです。
香料を加えた試料だけを嗅いでしまうと、香料の出方が変わったのか、それとも基材のにおいが重なっているのかを見分けるのが難しくなります。基材だけの試料と並べて比較することで、変化の理由を考える手がかりが増えます。
比較を行う際には、同じロットの香料を使い、調製から評価までの時間、保管温度、容器、試料の量をきちんと記録します。添加率をそろえる試験は、すべての基材で安定して配合できる範囲を確認してから行います。分離してしまった試料は、そのまま香りの優劣の比較には使えません。
さらに、基材の影響を見る試験と、完成品としての使い心地を見る試験は分けます。前者では条件をできるだけそろえ、後者では製品に合った添加量や使い方で評価します。この区別をつけておくことが、結果を読み違えないための出発点になります。「基材の影響」と「製品として使ったときの魅力」を分けて考えることが、香りを複数の製品へ展開する際の精度を高めます。
容器から嗅ぐ、広げる、洗い流す。場面を分けて観察する
香水なら噴霧の直後と時間が経った後、クリームなら塗った直後となじんだ後、シャンプーなら泡立てたときとすすぎ・乾燥後。実際の使用を想定する段階では、各製品の使われる場面に沿って評価していきます。同じブランドの香りであっても、それぞれの場面で心地よく感じられることが重要だからです。
シャンプーであれば、水量や温度、泡立て方やすすぎ方も記録します。毛束を使う場合は、毛束の種類や量、乾燥条件をそろえます。条件が違ってしまうと、基材による差なのか、使い方の違いによる差なのかが重なって分からなくなるからです。
肌や毛髪を使う試験は、安全性を確認し、実施条件を決めたうえで行います。嗅ぐための試料として調製できたことと、実際に肌に使えることとは別です。安全性と品質を保ちながら比較するためにも、評価方法はあらかじめ決めておきます。
記録をつける際は、たとえば次のように項目を分けます。
- 強さ:どの場面で強く、どの場面で弱く感じるか
- 香調:柑橘、花、木など、どの特徴が目立っているか
- 基準との近さ:残したい特徴が感じられているか
- 時間変化:印象がどう移り変わり、何が残るか
- 違和感:基材由来と思われるにおいがあるか
これらは評価項目の例であり、結果を予測するものではありません。試料に記号を付けて配合の情報を伏せたり、提示する順番を変えたり、休憩を挟んだりする方法も検討します。複数回の評価を重ねて、違いが再び捉えられるかを見極めることが大切です。
調香師の言葉と、機器分析を照らし合わせる
単に「弱くなった」という記録だけでは、香料全体が出にくくなっているのか、それとも目立っていた一部の特徴が変わったのかが分かりません。香りを分けて言葉にしていくことは、次の試作を考えるための大切な作業です。
ガスクロマトグラフィーと質量分析を組み合わせたGC-MSは、香料成分を調べる手段の一つです。試料の上部の空気を採取するヘッドスペース分析を行えば、条件をそろえて気相中の成分を比較することができます。
ただし、検出量の大小をそのまま人間が感じる強さや好みに置き換えることはできません。人が嗅いで評価する官能評価と、機器が捉えた成分の情報を照らし合わせて、変化の理由を考えていきます。また、分析だけで製品の安全性を保証できるわけでもありません。
プロモツール香り技術研究所には、日本を代表する調香師・渡辺武志(プロモツール香り技術研究所長)をはじめとする調香師陣と、フレグランスアナリスト(成分分析を担う人材)が在籍しています。調香師が感じ取った香りの変化を言葉にし、必要に応じて分析情報とも照らし合わせながら、次の試作につなげます。資生堂、大手化粧品のプレステージブランド、JALなど、幅広い顧客との香りに関する開発・採用実績を重ねてきました。プロモツール社の開発を、この専門人材が支えています。

違いを見つけた先に、製品の個性がある
比較実験を行う目的は、すべての基材に同じ順位を付けることではありません。どの場面にどの特徴を残せば、その製品らしい香りになるのか。そこまで考えることが、高級化粧品の差別化と、一貫したブランド体験につながる設計になります。
香りOEMでも、香水の華やかさをそのままクリームに求めるのか、それとも手元で穏やかに感じる方向へ調整するのかによって、目指すところは変わります。香りの差別化は、ただ強さを足すことだけで決まるものではありません。
企業やホテルのオリジナルの香りは、空間での演出から始め、まず一つの製品へ展開することもできます。さらに製品を増やすときは、香料をそのまま移すのではなく、基材や使われ方に合わせて香りを確かめ、調整していく必要があります。『このブランドらしい香り』を異なる場面でも感じられるようにすること。それが、プロモツール香り技術研究所の仕事です。プロモツールの香りを商品にする仕事や調香師の考え方については、調香師のアトリエでもご紹介しています。
プロモツールの香りづくりに関するご相談
プロモツールの香りブランディングでは、企業・ブランドのオリジナルアロマやホテルや商業施設の空間演出、香水、アロマスプレーなどの香り製品まで、目的や使用環境に応じた香りを設計しています。
ブランドの世界観を香りで表現した製品づくりをご検討の企業・施設のご担当者様は、プロモツールの香りグッズOEM・香水OEMまでご相談ください。
香りに関する様々な知見を発信しております調香師のアトリエもご覧ください。
渡辺武志(わたなべ・たけし)
プロモツール株式会社 香り技術研究所 所長/マスター調香師。
世界最高の調香師教育機関であるISIPCA (France) SUMMER SCHOOL “ADVANCED PERFUMERY COMPOSITION” 修了。調香師養成機関を卒業後、プロモツールに入社。JALエグゼクティブラウンジ、飛鳥Ⅲ、万平ホテル、JRタワーホテル日航札幌、外資系ラグジュアリーブランドなど、数々の空間の香りによるブランディングを手がけている。



