本のニオイ

皆さんは本を読んでいますか?

最近は電子化されたものを読む方が増え、本離れが進んでいると聞きます。

重い本や雑誌もタブレットやスマホ、専用の端末で簡単にどこにいても
好きな本を読むことができます。収納場所にも困りません。

でも、私は古い人間。どちらかというと、紙派です。ガイドブックや雑誌も紙で読みたい派です。

 つい便利でネットで本を買うことも増えましたが、私は本屋さんに行くことが好きです。

 素敵なこだわりの本屋さんも増えています。

先日京都で見つけた本屋さんには、バーやカフェ、雑貨屋や文房具、それに奥には食材店もついていました。

本のカテゴリー分けも凝っていて、何時間でも過ごしていたい本屋さんでした。

本を選ぶとき、その内容はもちろんのこと、本の装丁の美しさ、紙質、写真の美しさやデザインと、
いろいろこだわりを見つけるのも楽しいものです。

ネットで決まった本をポチっとするより、本屋さんや図書館に行けば素敵な本との偶然の出会いもあり、それが楽しみの一つでもあるのです。

  

本の材質についての歴史


本の歴史は紙の歴史でもあります。

 

~パピルス~

紙が作られる以前、古代エジプトではパピルス(paperの語源)が記録用の材料として使われていました。

ナイル川流域で取れる水草のパピルスの茎から皮をはぎ、中心部の芯を薄くスライスして加工し使っていました。

パピルスは紀元10世紀ころまで使われていました。

 

~羊皮紙~

紀元前2世紀頃には羊の皮を利用した羊皮紙が登場します。丈夫で美しく、折り曲げることも可能であったため重宝されました。しかし高価であったため、紙の普及とともに使われなくなりました。

 アイルランドの首都ダブリンにあるトリニティカレッジ。

こちらには世界一美しい彩色写本と呼ばれる「ケルズの書」があります。アイルランドでは7世紀頃、羊皮紙を使って美しく彩色された聖書が盛んに作られていたのです。

 羊の皮など動物のなめし皮には独特の臭いがあります。皮製品の加工で有名なイタリアではそのニオイを緩和するために、香料が使われ香水の歴史が始まったとも言われています。

 実際に羊皮紙の臭いを嗅いだことはありませんが、羊皮紙の臭いを嗅いだ感想を目にしたことがあります。

それは犬小屋にある毛布のニオイ!だそうです。敷物のムートンの裏側もかすかにそんなニオイがしていますよね。

 

~紙の登場~

最古の紙は紀元前176−141、中国で作られました。放馬灘紙(ほうばたんし)です。材料は麻布、アサのぼろ、樹皮、漁網の廃材などです。切り刻んで煮て、繊維を取り出し漉きました。現在の紙すきの技法とほとんど変わらないのです。その後シルクロードにより、紙の製法はヨーロッパへと伝わりました。

 

紙のニオイ


 

~ニオイの気になる紙~

 

<世界一臭い紙、とも呼ばれるアルシュ紙>

歴史は古く、多くの巨匠たちに愛されてきた高品質の紙です。1492年フランスのアルシュ製紙工場が誕生。

1493年にはグーテンベルグが発明した活版印刷法の最初期に出版された「ニュンベルク年代記」の紙に採用されています。この本は、デューラーが挿絵を描いたともいわれており、文字と画像が混在する印刷物としては世界最古と言われています。

(アルブレヒト・デューラー:ドイツルネサンス期の画家)

 
アルシュ紙とは?

コットンから作られた紙。サイジング(滲み防止)にゼラチン(膠)を使うため、濡れると溶けだして独特のニオイがする。昔はぼろ布を再生していたので、もっと臭かったともいわれている。

 

<ファンもいる?!紙袋、包装紙のニオイ>

包装紙のニオイがたまらなく好き、という人たちもいます。 どんなものが人気なのでしょうか?!

 ・和菓子屋さんの包装紙

・某チェーン店ハンバーガー屋さんの紙袋 

・岡山にある有名百貨店の包装紙                                                     

このような紙のニオイに執着のある方もいるようなのです。

 

それぞれのニオイを、目をつぶって思い出してみましょう。独特のあのニオイ、感じられたでしょうか。これらのニオイに癒しさえ感じるファンも少なくないようです。

 では、包装紙のニオイの元は何なのでしょうか?

 印刷する際にくっつかないようにデンプンを噴霧することがあるそうで、それらと紙、インクのマリアージュなのかもしれませんね。しかし、時には耐え難いニオイの紙に出会うことも。

 最近では、大手超有名衣料品チェーンの紙袋が有料化され、再生紙を使ったものが出回りました。しかし、あまりの強烈なニオイにモデルチェンジを余儀なくされたそうです。

 また、雨除けの効果があるような少し丈夫なテラっとつやのある紙袋。油のようなニオイが強烈なものがあり、すぐに処分してしまいました。

 段ボールも時に不快なニオイのものがありますよね。 たかが紙の匂い。されど、紙の匂い。商品を提供する側は、その商品のクオリティだけでなく、購買してもらった後、持ち帰るためや運ぶための梱包の材質、その品物が独り歩きをし始めた後にも気を配らなくてはいけないようです。

 

紙のニオイに敏感な消費者も意外と多いのです。

 

図書館のニオイ



皆さんは図書館にどんな記憶がありますか?

 

図書館のヒンヤリとした書庫。古い本のカビ臭さ、インクのにおい、重厚な皮表紙のニオイ。

最近は電子書籍に押されがちのようですが、四角い画面の中の本と、紙のページをめくっていく本と、みなさんは、どちらが好きでしょうか?

 無機質な電子書籍に比べ、本にはそれぞれ独特のニオイがあります。新書の匂い。古い本の匂い。 

思い出すのはちょっと鉄分のようなワサビのような、独特なニオイのする辞書。毎回、眉をひそめながら言葉を探した記憶があります。 内容とは別に、本には紙の材質、ニオイなど、電子化されたものでは味わえない趣があります。

トイレに行きたくなるニオイ


 

突然ですが、本屋さんや図書館で本を探していると、急にトイレに行きたくなった経験はありませんか?
インクなどの化学物質がトイレに行きたい気持ちを誘発する、との意見も結論は残念ながら出ていませんしかし、本屋さんで本を探す、立ち読みする、という行為が人をリラックスさせるのか?!?

何らかの引き金になっているのかもしれませんね。

 

本屋さんのニオイの香水?


思ったよりファンの多い本や紙のニオイ。実はそれらをイメージした香水もあるのです。

 

 Maison Margiela(メゾン・マルジェラ)

REPLICA Whispers in the Library」(ウィスパーインザライブラリー:図書館の囁き)

静まり返った図書館。磨き上げられた木の床。

本をめくる音だけが聞こえる空間をイメージしています。

実際の香りは、スモーキーでヴァニラの甘い香りの後には、スパイシーさも漂います。

オックスフォードにある古い図書館。

ワックスがけされた艶やかな床材と、古書の紙のニオイでしょうか。

実際に纏うにはハードルが高そうですが、試してみたくなりますね。

 

Powells Books(パウェルズ ブックス)

Powell’s by Powell’s

アメリカ、オレオゴン州ポートランドを中心にチェーン展開する書店が発表した香り。

本の香りがするユニセックスの香水です。

何百万もの本が醸し出す香り。微妙な本の香りをウッディーと

ヴァイオレットの香りで表現しています。

*残念ながら現在は販売されていないようです。

 

 

DEMETER(ディメーター)

Paperback

1996年ニューヨーク。

「だれもまだ作ったことのない香水を作りたい」

をコンセプトに生まれたブランド。香りが変わらない“よりリアルで、

より意図的に記憶をよみがえらせるかおり”がコンセプト。

シングルノートのコロンで、気軽に重ね付けもできます。

 

このコロンのタイトル、ペーパーバックとは、

安価な紙に印刷された紙製の表紙の本です。
接着剤で段ボール紙の表紙がつけられています。

 

香りはほんのり甘くて、少しだけスパイシー。

 

ホコリっぽい粗い目の紙、表紙の段ボール紙、接着剤(のり)の香りを

表しているのでしょうか。ペーパーバックの置いてある、

洋書売り場の香りを再現しているのかもしれませんね。

お好みのシングルノートコロンと重ね付けしてみるのも

面白そうです。


まとめ


・最古の紙は紀元前176−141、中国で作られた放馬灘紙(ほうばたんし)。

・アルシュ紙は世界一臭い紙、とも呼ばれている

・本のニオイでトイレに行きたくなる人もいるらしい

・本のニオイをイメージした香水がある

 

電子書籍も便利ですが、時にはマスクをずらして、

本の紙のニオイもチェックしてみてはいかがですか?

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