調香師の官能評価

精油を嗅いでいる女性

調香師に必要なスキルにはいくつかありますが、その中の一つに「官能評価力」があります。

そんな「官能評価力」についてご紹介します。
 

調香師の官能評価とは


青い空に咲くオレンジ色の花

官能評価とは品質検査などで用いる場合、五感を使って検査を行うことを意味しますが、調香師における官能評価は、香りを言葉で表現することを意味します。

例えば何かの香りを嗅いだ際、「私、これ好き」「これは苦手」といった表現をする方が多いと思います。
でも、“好き” や “嫌い” は評価ではなく主観なんですよね。
嗅いだ本人も「もっと違う言葉で説明したいんだけど、どう表現したら良いかわからない…」と言っているシーンには何度も遭遇してきました。

香りを言葉で表現することは慣れていないと、とても難しいと思います。

調香師が評価する言葉にルールはなく、どんな表現をするのも自由です。

具体的な商品名をあげてそれに似ているという表現、特定の香料を指した評価だけでなく、色や景色など抽象的なイメージで表現する場合もあります。
実際に存在しない言葉や起こりえない情景でも、その人がそう感じたのであれば良いのです。

 

官能評価力の訓練


3人でデスクの上で話し合い

調香師がどのように官能評価力を鍛えるか、ポイントは2つあります。

その①【香りを嗅ぐ → みんなで評価する】を繰り返す。

“みんなで評価する” 
ここが大きなポイントです。同じものを嗅いだ時に他の人はどう感じたか、どのような言葉で表現するのかを聞くことで、自分の表現力も上がります。
自分がこの感じた部分、どうにも上手く表現できなかったなぁ…という時に上手に評価している人の表現をパクるのです。
また、「この香りをこういう風に感じる人もいるのか」と、自分と他の人との感覚の違いも認識できます。
「甘い」と感じた場合、それは砂糖なのかフルーツなのか、フルーツだったら何のフルーツなのか、リンゴだった場合それは赤いものか青いものか抽象的なワードを掘り下げていくと具体的な表現が出来るようになります。

 

その②【複数のものを比べて評価する】

2つの香りを嗅いで、「その違いを認識する」と評価しやすいです。

Aと比べてBは、香りは弱いがまとまりはある”
ADの中では、Bが一番渋く感じる”

このように比較対象がある方が香りも記憶しやすいです。
調香師の勉強の第一歩はとにかく“嗅ぐ→評価” の反復です。(勉強始めた頃、毎日鼻の奥が筋肉痛になっていました)

 
 

相手に伝わる説明が大切


顔が書いてある親指同士が話している

例えば、基礎化粧品のCMで表現例としてこういった言葉を聞いたことがあると思います。

①みずみずしい
②しっとりしている
③もちもちしている
④ぷるぷるしている
⑤ふっくらしている

どれも肌が整っている状態だと分かりますが、それぞれの持つニュアンスから肌の水分量や肌質などの微妙な差も感じられますよね。
これだけ細かい表現ができる日本語ってとてもすごい言語だと思います。
言葉を使い分けると、より表現の幅が広がり相手に伝わりやすくなります。

「銭湯の脱衣所っぽい香り」なんて表現をしたこともあります。
シャンプーの香りを作ったのですが、ムスクやウッディのバランスが悪かったのか、汚いわけではなく、なぜか湿度の高い蒸れた肌のような香りが引き立ってたんですよね()

調香師が使う特有の表現だと…

●バルサミック
フランキンセンス、ベンゾイン、ミルラのような樹脂系の甘めのウッディ

●パウダリー
バニリン、クマリン、粉末のムスクなどこういう感じですが、これも感じ方は人それぞれで明確な定義はありません。

ソムリエやバリスタも調香の勉強と同じだと思います。
例えば白ワインでミネラルが多いタイプはキュッと閉まった味わいがあるとか…。

コーヒーは浅煎りだとカシスやベリー系の酸味が強い傾向になるとか…。

(実際に勉強したことはなく私が飲んだ感想なので、本当にそうなのかわかりませんが…)

講座に参加した際もみんなで飲んで、みんなで感想を発表していました。
感覚も感性も個人差があるので、間違いや正解はありませんが、言語化して感覚をすり合わせていくことで、共通認識を身に着けていくんですよね。

官能評価を一言でまとめると、「感覚を言語化して他者と共有すること」かな、と思います。

自分が感じていることに意識を向け、感じたことを言語化していくと感性が豊かになっていくと思います。

執筆者のご紹介

匹田 愛

Ai Hikita

繊細な嗅覚とタフなプロ根性を兼ね備えた骨太女子 良いニオイも臭いニオイも…

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