プリンの日

白いお皿の上に乗ったカラメルプリン

明日が地球最後の日だったら、あなたは何を食べたいですか?

きっと最後の晩餐にプリンも食べたい!という方もいらっしゃると思います。

こだわり自家製プリンを出す喫茶店に行ったことがありますが、卵とミルクとお砂糖と…ごく普通の材料でどうしてこんなに美味しいものが生まれるのだろうといつも不思議に思います。

本日はお菓子作りに必ずと言いていいほど使う“バニラ”についてお話したいと思います。

バニラについて


バニラの花とバニラビーンズ

 
プリンはもちろん、お菓子作りの時にバニラエッセンスを入れると入れないでは、仕上がりがこんなにも違うのかと不思議ですよね。
 
バニラエッセンスは天然のバニラビーンズから精製された香料、または合成のバニリンを中心としたバニラ香料、が使われています。
バニラの香りの主成分は「バニリン」で、これは母乳にも含まれていると言われ、香りは私たちが慣れ親しんだあのバニラの香りそのものです。
バニラはラン科の植物でバニラビーンズという約30cmの鞘状の緑色の果実ができます。
そのままではバニラ香はなく、花が咲くまで数年、発酵や乾燥など数か月にわたる工程と時間を経て、バニラ香を有した茶褐色のバニラビーンズになります。

バニラには大きく2種類あります。

・Vanilla planifolia Andrew (ブルボン豆) … マダガスカル、インドネシアなどで栽培

・Vanilla Tahitensis Moore (タヒチ豆) … タヒチや中南米諸国で栽培

ブルボン豆の最大の産地であるマダガスカルやレユニオンは、最盛期で総生産量の7~8割を占めていて、スタンダードなバニラ香をしています。
一方タヒチ豆は、ヘリオトロピン、アニスアルコールなど、バニラ香以外の成分も含まれており、生粋のバニラ香ではなく、杏仁豆腐やアニスのような香りがします。

社員でお菓子作りが趣味の女性がおり、以前バニラビーンズをたっぷり入れたシフォンケーキを作ってくれましたが、食べたときに何とも驚きました!
合成バニラとは違う慎ましやかな糖度を含まない甘さがあり、噛むたびに芳醇に立ち上ってくるレトロネーザルアロマ(喉の奥~鼻に広がる香り)がなんとすごいことか。
少し樹木っぽいパサっとした香ばしさもあり、フレーバーともフレグランスとも言えない別の領域の香りに感じます。

一方で合成バニラにも長けている部分があります。それは第一印象の強さです。
袋を開けた時などにフワッと香る、あの解き放たれた香りをしっかり出すのは合成バニラの得意分野です。オーブンなど高温で調理しても香りが損なわれにくく、卵やミルクの風味を引き立てながら香りが立ちます。
 
 

フレグランスでのバニラ


ピンク色の香水
 
フレグランスでもバニラはポピュラーに使われます。
シトラスが強くなったり、香り全体を見えないヴェールでまとめる効果があります。

「フレグランスには何でもバニラを少し入れておけば七難隠す」
と言う人もいるくらい万能です。

また長年のヒット香水の1つ、NICOSの“SCULPTURE”はトップノートから絶妙な加減でバニラが効いています。
入っていると一見気付かないですが、入っていることで着けた瞬間のシトラスとハーブの輪郭がきわだっています。

アイスクリーム、チョコレート、ジュース、リキュール、タバコ、フレグランスなど、主役、脇役、どこでも大活躍で欠かせない存在のバニラですが、特にマダガスカルのバニラは台風の影響で収穫量が激減しています。

一方でチョコレートなどの嗜好品の消費が世界的に伸びているため、近年天然バニラは価格がとても高騰しています。
植物から取れる香料は天の恵みの結晶です。
これから先も長く楽しめるように地球温暖化、現地の人の労働環境など、SDGsを意識し大切にしていきたいですよね。

執筆者のご紹介

匹田 愛

Ai Hikita

繊細な嗅覚とタフなプロ根性を兼ね備えた骨太女子 良いニオイも臭いニオイも…

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