最近 “パロサント“と言うワードや、商品を見かけることが多くなりました。
いったい“パロサント“とは何者なのか?
流行の香りグッズに敏感な方が注目している、パロサントについてお話していきましょう。
パロサントとは?
パロサントは、南米原産の香木(Bursera graveolens/ブルセラグラベオレンス)。
主にエクアドルとペルーの乾燥熱帯林で育ちます。「聖なる樹」と呼ばれ、フランキンセンス(乳香)、ミルラ(没薬)と同じムクロジ目カンラン科の植物です。香りは柑橘系や松、ミントの香りから、燃やすと、ほんのりバニラのような甘い香りが漂うそうです。
見た目は素朴な木のスティック、まさに木片。
しかしこれが今、感度の高い方々に人気なのです。
世界のセレブ達やヘルスコンシャスな方々が就寝前に焚いたり、ヨガやマインドフルネスをして瞑想や創造性を高める、心身のバランスを整えたいときに使っているのです。
パロサントの煙と香りは空間を浄化すると考えられています。停滞したエネルギーを取り去るためにパロサントを炊き、心を鎮めます。
古くから神官や祈祷師による儀式で用いられてきた、神聖な香木なのです。
しかし、現在パロサントはワシントン条約で原木を切り落とすことが禁止されています。
自然に倒木した木を使っているとのことで、大変貴重なものになっています。
パロサントはどこで売ってる?
私が初めてパロサントと出会ったのは、自然派化粧品やサスティナブルグッズなどを扱う店でした。
アロマオイルと並んで、小さな木片がパックされて売っていました。
お店の方に聞いてみると、火をつけてお香のように煙を燻らせ、心を落ち着かせたり、
空間を浄化させる物、との事でした。
まさに、香木といった感じです。
そのパロサント。
◆パロサントはどこで売ってるのか?パロサントはどこで買えるのでしょうか?
大手百貨店、雑貨店(伊勢丹や東急ハンズ)やアロマ関連のお店にあり、通関でも売っています。
しかしネット通販のお店で探すのが簡単ですね。
お値段もいろいろなので、比較してみる必要があります。
◆気になるパロサントのお値段は?(2022年/8月調べ)
10㎝程度のスティック状のパロサントが5~10本入りで、お安いものは700円ほどから、
1,000円~2,000円程度で売られています。ペルー産、エクアドル産と書いてあるものが多いです。
香りの雑貨を扱うお店やネットで目にすることが多くなり、手に入れやすくなったパロサント。
海外のセレブや流行に敏感な芸能人が愛用しているとの話題で人気も急上昇しています。
コロナ渦になって自分と向き合うおうち時間を大切にする方が増えたので、取り扱いも多くなったのでしょう。
パロサントの使い方
パロサントはどうやって使うのでしょうか?
パロサントの使い方は一つではありません。
◆燃やす
1.パロサントに火をつけて斜め45度に傾けて燃やします。(約30~40秒)
2.火が十分についたら、火を消します。
3.灰皿や耐熱性のある受け皿、専用のホルダーにのせて、お香のように揺らめく煙と香りを楽しみましょう。
◆そのまま置く
ほのかな香りをお楽しみください。
◆虫よけとしてクローゼットに置く
巾着やネットに入れて吊るすと防虫効果が期待できます。
パロサントの癒し効果
伝統的にパロサントが選ばれてきた理由は、その癒しにあります。
◆風邪やインフルエンザ
◆ストレス
◆喘息
◆気持ちの落ち込み
◆感情の痛み
パロサントの香り成分にはリモネンと呼ばれる放香物質が含まれています。
これは多くの薬用植物に含まれており、その抗炎症作用や鎮静作用が研究されています。
ヨガや瞑想、気分転換にパロサントを焚いて集中力をアップさせたり、
空間や気持ちを整えるのに利用してみてはいかかでしょうか。
香水の世界でも
香水業界にもこのパロサントブームは波及しています。
ウード、アガーウッドなど沈香や伽羅が取り入れられ、オリエンタルな瞑想系の香りもブームとなっていて香水がよりパーソナルな精神的なお守りのような役目にも使われているようです。
この香木系の香料原料、南米や中東、インドなどゆかりの地は様々ですが共通しているのは、儀式に使われ心に響く何か特別な力があると信じられてきた歴史ある香り、ということでしょう。
この混迷する世界情勢の中で沢山の人が救いや癒しを求め、内なる心の世界へと導いてくれる、そんな香りが求められていることを窺い知ることができます。
トムフォードのオリエンタルウッディーな香水、
“ebene fume”(エベーヌフュメ・黒檀の煙)やバイレードの“OPEN SKY”(オープンスカイ)にもパロサントが使われています。
<TOM FORD>トムフォード
ebene fume(黒檀の煙)
瞑想のような感覚を味わえる香りを求めていた。(トム・フォード)
古来、儀式に使われてきたパロサントを主に自身の内面へと向かうマインドフルネスと豪華さが一体となった香りです。
<BYREDO>バイレード
OPEN SKY
制限を余儀なくされた世の中。
かつての旅の記憶を回想し、また自由に動き回る、旅することへの期待を香りに表現。
これから始まる旅への感情を祝福するかのように、パロサントが効果的に使われています。
調香師が使ってみた”パロサント”
当社の調香師による、パロサントを使ってみた感想です。
「香りはとてもバルサミックです。サンダルウッドとアニスをミックスしたような甘みがあり、またオポポナックスのような木が濡れたようなしっとりした香りもあります。部屋に置いているだけで周囲にも香りが広がり、強い拡散力にとても驚きました。」
調香師ならではの奥行きのある香調説明ですね。
少々難しいワードも並んでおりますので、説明していきましょう。
◆バルサミックとは?
オリエンタルな香水などには欠かせない、主に木から採取する樹脂系の香料のことです。
ネバネバしていたり、カチカチに固まっていたり扱いにくいので、ラボではすり潰したり、希釈したり、温めて溶かしてから使います。重く甘い濃厚な香りが特徴的で香水の保留剤にもなります。
<バルサミックな香料>
フランキンセンス(乳香・オリバナム)、ミルラ(没薬)、ラブダナム、オポポナックス、ベンゾイン、べチバーなど
◆サンダルウッド
お香や線香の香りとして寺院や茶道、香道などで使われ日本でも古くからなじみ深い香り、白檀(sandalwood)。インド、インドネシアが原産ですが、非常に希少で高価なため、現在は合成香料が多く使われています。
◆アニス
甘くスパイシーな香り、アニス。フランスのペルノ・アブサン、トルコのラキ、ギリシャのウゾはどれもこのアニスのお酒です。独特の香りで、水を入れると白く濁ります。より安価なスターアニス(八角)にも同じアネトールという香り成分が入っているので、こちらを代用する場合が多いのです。
◆オポポナックス
フランキンセンス(乳香)、ミルラ(没薬)と同様に、古い時代から宗教儀式などで焚き染められていた樹脂です。
スイートミルラと呼ばれていることもあり、ミルラよりも柔らかな香りが特徴です。
香水の語源 Per-fume
ところで皆さんは、香水=PERFUMEの語源を知っていますか?
紀元前3000年、古代メソポタミアではシュメール人が松やレバノン杉を焚き、神に捧げていました。このように宗教的儀式などで行われる焚香がperfume(per -fumumラテン語で、煙を通じて)香水の語源となっています。高く天までも立ち上る煙と松や杉、ミルラ(没薬)やフランキンセンス(乳香)の深淵なる香りによって、人々は神とのつながりを感じ、また、神聖で厳かな気持ちになったのでしょう。
ネイティブアメリカンの間では、浄化の儀式スマッジ(燻すという意味)に香り高く神聖なハーブ、ホワイトセージが使われています。
仏教のお葬式や法要では焼香をして拝みますが、焼香の香りは仏の食物であると考えられているのです。仏さまにお供えをすると同時に、参拝する側の身を清めるという意味があります。塗香も同じように身に着けて穢れを除くものです。
古来より香りは私たちの心を揺さぶり、非日常の世界に誘ったり、気持ちを切り替えたり、癒してくれる存在だったのです。
ありとあらゆる情報が交錯し複雑な世の中ですが、香りや煙、炎の揺らめきは私たちの心をシンプルに戻してくれる効果が期待できるでしょう。
パロサント使って、空気を浄化したり、瞑想したり、気分を変える。
そんなルーティーンを取り入れて、心のメリハリを整えていきましょう!