日本における香りの歴史の始まりと香木について

日本有数のお線香の生産地


皆さんは、淡路島と聞いて何を連想しますか?
つやつやの玉ねぎ、明石海峡や鳴門海峡の急流にもまれ育った鯛、鱧、タコ。そしてジューシーな淡路牛。

実は他にも大変有名なものがあります。淡路島は日本有数のお線香の生産地でもあるのです。なんと全国の生産量の約70%を占めています。
淡路島と香りについての歴史を調べてみましょう。

国生みの伝説が残る、島内の伊奘諾(いざなぎ)神宮内には、香木伝来伝承地の碑が有ります。
今から1400年前、この淡路島に流木が流れ着き、島民が薪と一緒に焚き染めるとなんとも良い香りがしたので天皇に献上した、と言う伝説が日本書紀に記されています。

これは、沈香(じんこう)と言う香木だったのでしょう。

ところで、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』をご覧になった皆さんは、織田信長が「蘭奢待(らんじゃたい)」という貴重な香木を切り取る場面を覚えていますか?
信長は天皇の許しがなければ拝聴することすらできない、貴重な正倉院の宝物「蘭奢待」の切り取りを行いました。蘭奢待を持つことは、天下を納めるもののステータスだったのでしょう。
これで、事実上歴代将軍と肩を並べたこととなり、正親天皇を威圧し、自らの権力を世間に知らしめようとしたのです。

 

「蘭奢待」(らんじゃたい)とは?


全長156cm・重量11.6kgの巨大な香木・沈香(じんこう)で、式名称は「黄熟香(おうじゅくこう)」。
古来“天下第一の名香”と呼ばれています。東大寺を創建した聖武天皇が「蘭奢待」の名付け親です。
雅名(がめい)である「蘭奢待(らんじゃたい)」の3文字には、それぞれ「東」「大」「寺」の文字が隠されています。現在も正倉院の宝物として収蔵されており、足利義政や織田信長、明治天皇が切り取らせた箇所を確認することができます。

 

沈香(じんこう)とは?


熱帯アジア原産のジンチョウゲ科ジンコウ属の常緑樹。
長い年月を経て樹木が傷などダメージを負った部分から樹脂が分泌、生成され沈香となります。
一般的に常温では香らず、高温で樹脂が揮発して放香します。偶然の産物で、人工的には作ることができません。乱獲を防ぐため、現在ワシントン条約により規制されています。

 
 

伽羅(きゃら)とは?


伽羅とは、ベトナムのごく一部でしか産出されない、沈香の最高級品のことを指します。
中東では“OUDウード“と呼ばれています。甘く神秘的でスパイシーな香りなので、香水にもよく使われています。「甘・酸・辛・苦・鹹(しおからい)」と、5味に通じる香りがするようです。
古ければ古いほど良い香りがするといわれており、また、薬剤として鎮静効果にも優れています。ネット上で調べてみたら、伽羅は1gなんと2万~5万前後で売られています。

とても日本的な、そして、大切にしていきたい伝統文化ですね。

日本の国生みの神話と香木の伝説の残る淡路島。そして、時の権力者たちを魅了した伽羅や沈香。

時には日本の香りを取り入れて、悠久の歴史ロマンを感じてみてはいかがでしょうか?

執筆者のご紹介

リモーネ

Limone

国内外の調香師アシスタントを経て、 香料に携わり気が付いたら早、四半世紀…

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